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コイ目 ドジョウ科 絶滅危惧IB類(EN)

和名 ホトケドジョウ  
学名 Lefua echigonia Jordan et Richardson, 1907
原記載 Jordan and Richardson. Proc. U. S. Natl. Mus., 33(1570): 263
英名 Japanese eight-barbel loach
固有性 日本固有種



摘要

本州に固有に分布する小型のドジョウ類で、湧水を水源とする細流、湿原や水田周りの小溝に生息する。湧水の枯渇、圃場整備、過度の農薬散布、宅地化により各地で急減している。


形態

体は細長く円筒形で、背鰭は腹鰭と対在するか後方にある。小型で最大全長は雌雄とも約80mm、吻は短く、眼は大きい。髭の数は4対、鰭条数は背鰭iii+6〜7、臀鰭iii+5、縦列鱗数は91〜117、ウェーバー器官支持椎体を含む総脊椎骨数は32〜34。体と鰭は茶褐色の他に暗色斑点は散在する。下顎は腹側に1対の黒斑を備える個体もある。同属のナガレホトケドジョウ(Lefua sp.)とは体形や斑紋のパターン、および生息場所の違いにより識別できる。


分布の概要

青森県を除く東北地方から近畿地方までの本州に分布する。国外からは報告されていない。


生物学的特性

冷水性の底生魚で、水温が27℃を超えると弱る。湧水を水源とする細流、湿原や水田周りの小溝に生息する。とくに、やや開けた流れの緩やかな場所の砂泥底に多い。静岡県、京都府、兵庫県ではホトケドジョウとナガレホトケドジョウが同一水系内ですみわけ、それぞれが生態学的特性に合わせた場所に生息する。一般に、成長は1年で全長3〜4cm、2年で4〜7cmに達するものと思われる。産卵期は3〜7月で、メス親は水草に卵を産みつける。仔魚は孵化後すぐには着底しないで、全長約20mmになるまで底近くを浮遊している。底生小動物を中心とする雑食性。初期餌料としてかならずしもワムシを必要とせず、飼育下ではアルテミアと微粒子飼料で飼育が可能である。多くは1年で成熟するが、個体によっては2年目で成熟するものもある。


分布域とその動向

現在までのところ、宮城県白石川、栃木県利根川、群馬県利根川水系西田川、埼玉県荒川・越辺川、茨城県白村川水系深川・山田川水系左支川・蛇尾川、千葉県養老川・印旛沼周辺、東京都多摩川、神奈川県鶴見川・帷子川・大岡川・清水川・田越川・神戸川・滑川・相模川・花水川・境川・葛川・引地川・中村川、新潟県長岡市(模式産地)、山梨県富士川、静岡県狩野川・都田川、愛知県西加茂郡・矢作川、三重県安濃川・雲出川・宮川、滋賀県琵琶湖周辺、京都府鴨川・綾部市周辺、および兵庫県加古川から記録されている。分布域の縮小率は正確には把握できないが、分布域は確実に小さくなっている。

分布情報:2次メッシュ数:236、3次メッシュ数:454( 生物多様性調査動物分布調査)


個体数とその動向

地方分化が進んでいるが、地方個体群別の個体数の動向は不明。生息地の減少から判断して個体数も減少していることは間違いない。


生息地の現況とその動向

かつての生息地の多くは宅地化や圃場整備により消失している。


存続を脅かしている原因とその時代的変化

湧水の消失や、水田周りの小溝のU字構化にともない、全国的に減少している。静岡県小山町付近の酒匂川上流域では、1960年代までどの小溝にも多数見られたが、1970年代に入ると急減した。日本の農薬製剤生産量は戦後増え続け、1974年に約75tのピークに達している。現存の個体は、農薬の影響が軽微な扇頂部付近の山林との境目に集中する。時期的な一致から、農薬の過剰散布(32)も急減の一因と見なせる。


特記事項

本種は遺伝的にも形態的にも区別されるいくつかの地方個体群に細分され、それぞれが亜種に相当するものと思われる。今後、分類学的な整理が必要である。


保護対策

神奈川県と岐阜県では本種の生息地復元を目的としたビオトープの造成がなされている。また、農林水産省農村振興局では本種を指標とした水田の生物多様性保全施策が立案されている。


参考文献
1. 藤田光・大川健治,1975.日本産ホトケドジョウの地理的変異について(予報).魚類学雑誌,22: 179-182.
2. 細谷和海,1993.ドジョウ科.中坊徹次(編),日本産魚類検索,pp. 231-235.東海大学出版会,東京.
3. Jordan and Richardson, 1907. On a collection of fishes from Echigo, Japan. Proc. U. S. Natl. Mus., 33(1570): 263-266.
4. 宮地傳三郎・川那部浩哉・水野信彦,1976.原色日本淡水魚類図鑑,全改訂新版.保育社,大阪.462pp.,56pls.
5. 日本魚類学会,1981.日本産魚名辞典.三省堂,東京.vii+834pp.
6. 勝呂尚之,2002.ホトケドジョウの初期飼育条件.SUISANZOSHOKU, 50(1): 55-62.

Lefua echigonia : Cypriniformes, Cobitidae (EN) [Plate 7-D]

Lefua echigonia, distributed in Honshu, inhabits wetland streams and ditches around rice fields to which water is supplied from springs. Individual numbers have diminished due to decreased spring-water supply, overuse of agricultural chemicals and habitat disturbance caused by rearrangement of rice fields.

細谷和海(近畿大学農学部)


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